あすなら保育園の取り組み
食べることは生きること
あすなら保育園では食事については本当に色々考えぬいて、また調理員や保育士で話し合いながら、
一人ひとりの食べる様子を見ながら毎日の食事を大切に作り上げています。
でも、一番大切なことは「How to」ではなく、「食べたい!」「おいしい!」と思えることではないでしょうか。
それが、生きる意欲につながります。
「だったら好きなものを好きなだけ食べてたらいいんじゃないの」と言われそうですが、
本当においしいものは身体にもおいしいもの。
私たちは身体に悪いものも脳が「おいしい」と勝手に判断して、お菓子やお酒に浸ったり、暴飲暴食したりしていないでしょうか。
また、身体には良いものなのに、「嫌いだから食べない」ものはありませんか?
(「偏食」は食感や匂い、見た目などから脳が「これはイヤ」と決めつけています。
そしていったん決めつけたことを覆すには、結構な努力が要ります)
だからこそ、身体においしいものを脳もおいしい、と感じられるように、調味料は控えめに、素材の味を、だしの味を生かして、
しっかり噛んで食べる食事を積み重ね、偏食を無くしています。これは幼少期にこそ身に着けたい「感覚」です。
そして、身体においしい食事を本当に「おいしい!」と感じるには、「お腹が空いていること」が何より大切。
そのためにも、いっぱい遊んでたっぷり眠ること。
早寝早起き、食事も決まった時間に食べると、より身体が「おいしい!」に反応します。
そしてそして、身体も心も「おいしい!」と感じるには、やっぱり大好きな人と一緒に食べること。
楽しい会話があってこそ。
逆に、テレビやビデオを見ながらの食事では、脳に「味わう」余力が残っていません。
大好きな人との食事。家族はもちろん、友達、先生、憧れのお兄ちゃんやお姉ちゃんなどなど。
コロナ禍でも「黙食」は子どもにとっては辛いこと、育ちを阻むものと受け止め、
座席の工夫をしながらも「黙って食べる」は子どもには強要しないようにしていました。
散歩の楽しみ
あすなら保育園では、晴れの日は毎日のように散歩に行きます。
幼児はファミリー公園や宮堂町の神社、乳児もお隣のあすなら苑や平端公園まで行きます。
0歳児も歩行が確立してくれば、あすなら苑のお庭まで散歩に行ったりします。
なので、10時ごろあすなら保育園に来ていただいても、園児が赤ちゃん以外誰もいない!という時もあります。
どうしてこんなに毎日毎日散歩に出かけるのでしょう???
子どもは戸外が大好きです。
エアコンの効いた清潔な室内で過ごすことに慣れてしまった新入園児は
外に行きたがらなかったり、汚れを嫌うこともありますが、赤ちゃんはもれなく水も屋外も大好き。
生物としての身体が、自然を要求しているのだと思います。
涼しい風や冷たい水を全身で感じることで、身体中の皮膚感覚、そして「心地よい!」という気持ち、
「冷たいね~」と他人と感覚を共有することを学んでいきます。
そんな優しい刺激や出会いがいっぱい詰まっているのが「散歩」。
いつもと同じ道でも、春と秋では違う花が咲いていたり、実がなっていたり、時には虫などの生き物に出会ったり。
そして、仲間と追いかけっこやかくれんぼをしながら行く道中は、1回として同じ経験はありません。
だから子どもたちは散歩が大好き。
「今日は何があるかな?どんな楽しみがあるかな?」とワクワクしながら出かけて、
「ただいま~!」とお腹を空かせて帰ってきます。
年長になるとより雄大な自然を求めて、
曽爾高原や葛城山、川上村にアマゴつかみに行ったり、山添村に羊に会いに出かけたり。
車に乗ってのお出かけは、もう何日も前から指折り数えて楽しみにしています。
そして帰ってからは、仲間と共に楽しかった思い出を、いっぱい絵に描きます。
散歩(園外保育)のためには、保育者は園内以上に配慮が必要で、大人の体制も厚くする必要があります。
でもそんな苦労やコスト・リスクを負ってでも、子どもから散歩の楽しみを奪ってはいけないと、職員は毎日頑張ってくれています。
あすなら保育園便り
コミュニケーション力=人と関わる力は、
私たちの保育の中で最も重要で、かつ最も難しいテーマです。
子どもたちの人と関わる力を育てる中で、
大人も自らの「人との関わり方」を突き付けられます。
そうして、私たちの関わる力も子どもに育ててもらっています。
どんな知識や技術よりも「人と関わる力」が、
今、そして今後も一層重要になっていくのではないでしょうか。
そして「人と関わる力」は決してテクニックではなく、生き方そのものではないかとも思うのです。
人と関わる力を育てるには、まず「人と関わりたい」「人って素敵」と思えることが大切。
「基本的信頼感」と呼んでいますが、
それは赤ちゃんの時に、泣いて訴えたら応えてくれる、
自分の要求を叶えてくれる経験の積み重ねで培われていきます。
そのためにも、私たちはパンツや布おむつでの生活を大切にします。
濡れる→気持ちが悪い(不快)→大人が気付いて変えてくれる(快)
この繰り返しが大人への信頼感になるのです。
そして目と目を合わして赤ちゃんに笑ったり話しかけたりすること。肌と肌との触れ合い。抱っこしたり、くすぐり遊びをしたり。
こんな楽しい気持ちよい大人との関りから、人と関わることへの要求が生まれます。
関わる力=他人の思いを受けとめる力、と考えがちですが、
受けとめるにはまず自分の思いを出さねばなりません。
大人にも自分の思いをあまり出さずにひたすら受けとめている方もいますが、きっとどこかでしんどくなります。
自分のやりたい思い、感情(嬉しい、くやしい、悲しい、寂しい)をまずは思いっきり吐き出すことで、
自分の気持ちに気付くとともに、「思いは出しても大丈夫なんだ」という安心感を育みます。
受けとめてもらえた経験があってこそ、他人を受けとめることもできるのだと思います。
自我の誕生は1歳児後半から。
2歳児、3歳児で「自我の爆発」と呼ばれるピークを迎え、
3歳児後半からは「自我の充実」期に入っていきます。
この時期に、自分の思いを出して、その結果友達とぶつかり合い
(大人とではぶつかり合いにならないので、子ども同士の関係がなおさら大切なのです)、
けんかを通じて自分の思いと他人の思いの違いを知ります。
そうして、4歳半の「〇〇ダケレドモ××する」ことができるようになっていきます。
「いきなり大層な」と思われると思いますが、
さくらさくらんぼ保育の創設者である斎藤公子さんが、
5歳児の保育に掲げたテーマです。
仲間と力を合わせる、知恵を寄せ合って、みんなが満足できる選択肢を創造する。
そんなことができるようになるのが5歳児なのです。
幼児になると「今日みんなで何をして遊ぶか。」を自分たちで決めます。
最初は「缶蹴りしたい!」「散歩したい!」「鬼ごっこしたい」ワーワー騒ぐだけで全く決まりません。
でも決まらないと遊べない。
まずは順番にしゃべる、人の話を聞く、ルールが必要で、ルールを守ることが大切です。
そんな社会性を遊びやリズムの中で培っていきます。
そして、違う思いの友達もいることに気づく。じゃあどうやって決める?それも大人が決めずに、決め方も自分たちで考えます。
「多い方で決める」それは公平かな?
「じゃあ代表じゃんけん」少数の意見や口を開かない友達の思いも大切にします。
5歳になるとそんな「話し合い」も大切にして、主体的、民主的に生活を進めていくことを大切にします。
正直、「大人が決める」方が子ども大人も楽なのでそちらに流れていきがちですが、
そうならないよう、ここは保育者が心して取り組みます。
力の強い人、声の大きい人に引っ張られない集団になっているのか、
自分の頭で考える集団になっているのか。
子どもが素晴らしいなぁと感心するのは、
そんな話し合いや日々の色々な活動を集団でする中で、
自分と友達の「得意なところ」「素敵なところ」をどんどん見つけていくことです。
早くできることだけが素敵なことじゃない。
じっくり頑張る名人や、慰める名人、教える名人、待つ名人などなど・・・・。
お互いの違いと良さを認め合える、そして自分の意見はしっかり伝える、
違いがあるときはみんなでどうしたらよいか考える。
このことができる子どもたちは、小学校に一人で行ってもきっと友達がたくさんできる。
そしてどんな社会になっても、未来を切り開く若者になっていくと信じています。